金 子 兜 太
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句集「雪影」
(せつえい)
北村美都子
【著者略歴】北村美都子(きたむら みつこ)
昭和15年 新潟県十日町市に生まれる
【俳 歴】
昭和34年「絵画即俳句」の言葉に出会い句作を始める
昭和40年「海程」入会 46年同人
昭和40年 新潟県俳句作家協会会員
昭和42年「海峡」入会 44年同人(平成13年終刊)
昭和44年 第12回新潟県俳句作家協会賞受賞
昭和44年 昭和44度海峡賞受賞
昭和45年 第2回新潟県芸術祭(俳句部門)賞受賞
昭和60年 現代俳句協会会員
昭和63年 「麓」入会 平成2年同人
平成8年 第13回麓賞受賞
平成13年 新潟支部誌「航つうしん」創刊・編集
平成15年 第1回l金子兜太選出
海程同人各集(海人集2)年間賞受賞
平成16年 海程会賞受賞
平成20年 海程賞受賞
最短定型への労り
ー序に代えて 金子兜太
北村美都子の俳句、
流さるる遊びが楽しあめんぼう
について、こう鑑賞したことがあった。
「この人の俳句の馴染み易さは、最短定型によって、長年にわ
たって熟成されてきた美趣(それをしも伝承の美趣と言おう。これ
には季語も大いに働いている)を、かなりに活かしながら、現在唯
今の現実感(実感)を積極的に書き込んでゆこうとする、その両側
への兼ね合いが考慮されていることにある。徒らに〈新〉をもとめ
ず、といって十分に〈新〉に執して、しかも読む人への伝達の和や
かさを大事として、俳句をつくっているということ」と。
この基本姿勢の故に、次のような近作の思い切った修辞が可能と
もなり、伝達力を失うこともない。
雪雪雪雪雪ねむくなるくすり
こうした姿勢をとりつづけて四十年以上になるわけだが、根っ子
にあるものは、五七調最短定型、この詩形への労りだとおもう。こ
の詩形を好んでいるていどのことではなく、母のごとく労っている
のだが、この心情は、北村美都子の風土(肉体)によって育まれて
いると私はみている。「日本でも有数の豪雪地である新潟県十日町
有に生まれ育った私は、・・・・」と、先ず「あとがき」を書
き始める自愛である。
だからいわゆる前衛の批判に動揺しない。守旧派の叱声に驚く
こともない。本物の〈現代〉、その〈新〉を目指して、ゆっくり
創りつづけているのである。
平成二十一年(2009)年初秋 熊猫荘にて
自選句
「雪影」 十五句抄 北村美都子
白のほかは何も見えざり白鳥来
(く)
天に声あふふるときは雪とならむ
地図の海かがやく雪降る盆地にて
春かみなり生家の柱現るる
散ってくるさくらさらさらと皿洗う
リラの花感覚的に布を裁ち
おのが音に憑かれし滝の落花かな
ほんとうの闇知りつくし蛍飛ぶ
流さるる遊びが楽しあめんぼう
玻璃をうつ霰は華よ待ち合わす
降る雪の今日の一心不乱かな
ちちははのくにより音もなく雪夜
息をしてはならぬ検査を冬の雷
風花や鏡の中を誰か来る
みほとけや厚きまなぶた小鳥引く
(句数が多いので平成十四年から現在までからアップします・管理人)
あめんぼう
むしかりや仰臥安静とは真白き
梅雨の潟表面張力わたしにも
かるい目眩は錯覚に似て夏つばめ
父の忌の聳えて冬の欅かな
寒凪やひそかに人に死がそだち
淋しいと言えず集まる冬の海猫
発熱といういのちかな白雨過ぐ
拝啓と書けば北国
(ほっこく)
春あられ
点滴は鶯のくる枝に掛けよ
春風のカーテン居留守という戯
(あぞ)
び
蝌蚪に足ことばあそびのようにかな
新潟県中越地震 4句
釣瓶落とし海へ突き抜けゆく地鳴
(ちめい)
坂鳥や生家に迫る震源地
虫耐えし闇揺りかえす地震の闇
地震以後のうからの声を冬林檎
冬の雷
にんげんの影はんざきをおどろかす
綾取りの母子の十指さやに密に
まっすぐの瞑想樅に冬入日
白雨かな坐れば老いの早くなり
想いひとつふたつ白鷺一羽二羽
風花
現在地とは老鶯を聴くところ
鉄線花ふわと自分史ひもとかれ
青ひさご思惟に重力あることも
捨てるもの捨てさって秋高きかな
行方知れずのわたしが帰る長き夜
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