・金子兜太自選句

2009年5月
熊谷市の祝いの会 |
句集は絶版がほとんどですが、『金子兜太集』が購入できます。
全句集は第1巻 『少年~東国抄』まで。
定価 6500円+税 筑摩書房または書店へお申し込み下さい。
筑摩書房サービスセンター 電話 048-651-0053
2009年5月 句集「日常」刊行 ふらんす堂

蛾のまなこ赤光なれば海を恋う 『少年・昭和30年』
富士を去る日焼けし腕の時計澄み
曼珠沙華どれも腹出し秩父の子
木曾のなあ木曾の炭馬並び糞(ま)る
魚雷の丸胴蜥蜴這い廻りて去りぬ
水脈の果(はて)炎天の墓碑を置きて去る
朝日煙る手中(しゅちゅう) の蚕妻に示す
暗闇の下山くちびるをぶ厚くし
朝はじまる海へ突込む鴎の死 『金子兜太句集・昭和36年』
銀行員等(ら)朝より蛍光す烏賊のごとく
湾曲し火傷(かしょう)し爆心地のマラソン
華麗な墓原女陰あらわに女眠り 粉屋が哭(な)く山を駈けおりてきた俺に
黒い桜島折れた銃床海を走り
果樹園がシャツ一枚の俺の孤島
わが湖(うみ)あり日陰真暗な虎があり
どれも口美し晩夏のジャズ一団 『蜿蜿・昭和43年』
霧の村石投(ほう)らば父母散らん
三日月がめそめそといる米の飯
人体冷えて東北白い花盛り
谷に鯉もみ合う夜の歓喜かな 『暗緑地誌・昭和47年』
二十のテレビにスタートダッシュの黒人ばかり
暗黒や関東平野に火事一つ
海とどまりわれら流れてゆきしかな 『早春展墓・昭和49年』
骨の鮭鴉もダケカンバも骨だ
ぎらぎらの朝日子照らす自然かな 『狡童・昭和50年』
日の夕べ天空を去る一狐かな
わが世のあと百の月照る憂世かな
霧に白鳥白鳥に霧というべきか 『旅次抄録・昭和52年』
梅咲いて庭中に青鮫が来ている 『遊牧集・昭和56年』
山国や空にただよう花火殻
猪(しし)が来て空気を食べる春の峠
抱けば熟れいて夭夭(ようよう)の桃肩に昴(すばる) 『詩經国風・昭和60年』
夏の王駿馬三千頭と牝馬(めうま)
主知的に透明に石鯛の肉め
若狭乙女美(は)し美(は)しと鳴く冬の鳥
牛蛙ぐわぐわ鳴くよぐわぐわ 『皆之・昭和61年』
大根の花に水牛の往き来
夏の山国母いてわれを与太と言う
冬眠の蝮のほかは寝息なし
毛越寺飯(いい)に蝿くる嬉しさよ 『両神・平成7年』
二階に漱石一階に子規秋の蜂
(みみずくの漢字がないため仮名表記) 存在やみみずくに寄り添うみみずく
長生きの朧のなかの眼玉かな
酒止めようかどの本能と遊ぼうか
春落日しかし日暮を急がない
梅雨の家老女を赤松が照らす
(モロッコ) ときに耕馬を空に映して大地あり
花合歓は粥(しゅく)花栗は飯(はん)のごとし
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