金 子 兜 太
メニュー情報
金子兜太句集『猪羊集』
TOP
BACK
猪羊集・現代俳句協会
句 集 『猪 羊 集』
解題
安西 篤(金子兜太集第一巻より転載)
付・後記 (著者エッセイ(俳句によせるおもい)(守武のこと俳諸のこと))/
解説 (「金子兜太句集『猪羊集』に寄す」山田みづえ)/「金子兜太年譜」/
「金子兜大著書目録」/「あとがき」、総頁260頁、判型・ B6判、造本・並製カバー装、装幀・上口睦人、口絵二頁(写真・田沼武能)、発行・1982年7月20日初版、発行所・現代俳句協会、「現代俳句の一〇〇冊」 シリーズ10
『猪羊集』は、第一句集『少年』以降『遊牧集』にいたるまでの九冊(未
刊句集二冊を含む)のなかから、 旅の句中心に抄出し、さらに『遊牧集』
以後の旅の句76句を加えたもの。本句集全体は278句を収録しているが、こ
こでは重複を避けて、『遊牧集』以後の76句のみを収めた。
「あとがき」によると、題名の由来は「猪は山国の名物、私が未歳(ひつじ)とい
うことで、猪羊集という題をひねりあげた」という。好評を博した旅吟のアンソロジーである。
『猪羊集』
(金子兜太自選句)
日本海に真冬日あらん山越えれば
さすらえば冬の城透明になりゆくも
春の航夢にがぶりて鱶の腹
荒天の高知菜の花粉微塵(こなみじん)
鮎食うて旅の終りの日向ある
一舟そこにさすらうごとしこおなご漁
夏は白花(しろはな)抱き合うときは尻叩け
朝の星黄金虫標本室は彼方に
食べ残された西瓜の赤さ蜻蛉の谷
道志村(どうし)に童児山のうれしさ水のたのしさ
死火山屋島菜の花どきはかもめかもめ
空海幼名は真魚(まな)春鴎くる内海
えんぶり衆白き夜雲の田へ帰る
桃の里眼鏡をかけて人間さま
桃の村からトンネルに突込む塩気
新墾(にいはり)筑波胡瓜はりはり噛めば別れ
立山や便器に坐禅のような俺が
黒部の沢真つ直ぐに墜ちてゆくこおろぎ
『猪羊集』後記
金子兜太
猪は山国の名物、私が末(ひつじ)ということで、猪羊集という題をひねりあげた。山国育ちの羊の句集ということである。
内容は、過去の句集九冊(未刊句集二冊を含む)から旅の句中心に好きな句を
抄出し、それに、その後にできた旅の句を加えるかたちをとった。思いかえしてみ
ると、兜太百句式の自選句集で手軽なものが、『戦後排句作家シリーズ』(海程戦
後の会刊) の兜太集以後なかったのである。あれは十五年以上も前の刊行で、
すでに絶版になっている。その後に出たものは形が大きい上に部数が少ないから、
とても手軽とはいえないし、近刊句集の句がはいっていない。
旅の句に執着したのは、旅の句が好きということと、ここ十年くらいは旅で得た句が圧倒的に多いことによる。なお、抄出に当って表記を修正したものがいくつかあるが、この句集のものを決定版としておきたい。
copyright© kaneko tohta All rights reserved